【短編】メルティングギフト
「ううん。夜に雨降るって言ってたから持ってきてないや。久代くんは?」

「僕もです。まだ日は出てますけど、万が一のことも考えて少し早めに切り上げます?」

「そうしようか。濡れて風邪引くといけないもんね」



取って貼りつけたような笑顔を浮かべて返答し、ルーズリーフを裏返す。


どうしよう、わからない問題が出てきた。

おかしいな、高3は1度も授業休んだことないのに。

あぁでも、振り返ってみたら半分上の空だった時があったっけ……。

板書は完璧に書き写してたけど、口頭で説明してた分を聞き落としてたんだ。


詰めの甘さに落胆し、チラッと前方を見る。


電子辞書かぁ。電池切れてたから家に置いてきちゃったんだよね。

スマホで調べようか。でもサボってるって思われないかな。

テーブルの下で使えばバレないけど、それこそカンニングしてそうに見えるからちょっと……。



「あの……」



考え込んでいたら呼ばれてしまった。



「ん? どした?」

「ずっと固まってたので、気になって」
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