【短編】メルティングギフト
すると、彼が胸元から布らしきものを取り出し、先輩の顔を優しく擦った。


は……⁉ ちょっ、なに勝手に触ってるんだよ。俺でさえまだ触ったことないのに。

たとえ布越しでも許さな……えっ、泣いてる……?
なんで? まさか、喧嘩してた?


涙を流す彼女を心配の目で見ていると、信号が青に。

車が動き出し、2人の姿は流れる景色に紛れて小さくなっていった。







翌週の月曜日。

後ろに置いていた荷物を自分の席に運び、スマホをチェックする。


通知0件、既読マークなし。だよな、テスト初日だし。

誰だって朝は忙しいんだから、送ったところですぐ返事が来るのは稀。端から期待はしていない。


けど……未読のままなのは、ちょっと困る。


まぁ、学校終わった後に見るかも……いや、この前みたいに家に忘れたって可能性もあるよな。

待ち伏せするのは気が引けるけど……今日は特別な日だから許してほしい。
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