【短編】メルティングギフト
メルティングギフト
「ただいま」

「あらおかえり。早かったね」

「今日は2つだけだったから。買い物に行くの?」

「うん。ちょっとそこのスーパーに。1時までには帰るつもりだけど、お腹空いてるなら、さっきおにぎり作っておいたからそれ食べてて」

「はーい。いってらっしゃい」



トートバッグを持って出ていった母を見送り、玄関の鍵を閉めて家に上がった。

洗面所で手を洗い、おにぎりが待つキッチン……ではなく、自分の部屋へ。


……大丈夫、だったよね。入る前に表情筋確認したから。違和感はなかったはず。


荷物を床に置いてベッドに座る。


突然の豹変に頭が真っ白になって、聖奈ちゃんに挨拶されるまで呆然と立ち尽くしていた。

帰ってる時も、冷たく突き放す姿が頭から離れなくて。何度も胸が締めつけられた。


……何が、嫌だったんだろう。

返信できなかったから? お誘い断ったから?

いつも笑ってたけど、本当は我慢してて、限界に達したから爆発しちゃったとか?
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