【短編】メルティングギフト
隣に座った彼が私の背中を擦る。


普通は何の連絡もなしに1時間も待たせた側に非があるけど、事の発端は記念日を忘れた私。

当たり散らしてる場合じゃないし、真っ先に謝らないといけないのに。

今は来てくれた安心感で涙が止まらない。



「すみません。返事しなきゃとは思ってたんです。けど……」

「……まだ、許せなかった?」

「……はい。ずっと楽しみにしてたので」



ポツリと寂しそうに呟かれた胸の内。
おかした過ちの重さを改めて実感する。



「っ……ごめんね。忘れるなんて、彼女失格だよね」

「いやそんな。僕のほうこそ、いきなり冷たい態度取ってごめんなさい。テストに支障出ませんでしたか?」

「うん、大丈夫。全問解けたから」



得意げに答えると、「ふはっ、さすが受験生」と優しい笑顔で涙を拭ってくれた。



「あっ、そうだ。プレゼント渡すね!」
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