【短編】メルティングギフト
不意打ちの褒め言葉に面食らい、目を見開く。


か、かわ……⁉ 久代くん、今まで私のことそんなふうに思ってたの……⁉


口をパクパクさせていたら、久代くんの手が私の顔に伸びてきた。



「本当に良かった、具合もテストもなんともなくて。こないだ号泣してたから少し気になってたんです」

「こないだ……?」

「……先週、時永さんと一緒にいたの、見ちゃって」



頬を撫でながら気まずそうに呟いた。

話によると、車で帰宅中に偶然見かけたらしい。


あの醜態、見てたんだ……。恥ずかしすぎる……っ。

涙の理由を明かそうか、一瞬ためらったが、これ以上心配をかけるわけにもいかないので正直に話した。



「そうだったんですか……。悩ませてしまってすみません。僕もお友達さんと同じで、そこまで問題ないと思いますけどね。素直で真っ直ぐなところが先輩の魅力ですし」

「そ、そう?」

「はい。ただ、隙がありすぎるところはちょっと困りますね」



頬に添えられていた手が腰に下りた。
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