ふたりだけの秘密、甘いこと。


「……あ、そういえば聞いてない」


「なにを?」


「琉唯くんが今日の撮影に来た理由」


「……ああ、それ」



ふ、と彼の長いまつげが影をつくって、……一瞬だけ切なげな顔をした気がした。



「……琉唯くん?」


「んー……次の撮影のときに教えてあげる」



まだ特集のとこ残ってるでしょ、と言ってドアノブに手をかけた彼にむっとした。



……また、教えてくれない。



琉唯くんは秘密主義だ。

捕まえたと思ったらするりと抜けられてしまうように、

いつもいつも、肝心なとこは今みたいにはぐらかして教えてくれない。



惜しむように手の甲を撫でられて、するりとほどかれる。



「……っ、」


「じゃーね、ののか」



いつもいつも、この別れが寂しいと思うのはわたしだけなんだろうな。



べつに、わたしたちは付き合っているわけじゃないから。



わたしだけが、彼に溺れている。
















俺以外の奴と“カップル特集”なんて、誰がやらせるかっつーの。






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