ふたりだけの秘密、甘いこと。
ふたりの世界が出来上がっている気がして、わたしは完全に場違い。
居たたまれないし、あんまり目の前の光景を目に映すことができなくて……胸が苦しい。
こんなとき、素直に応援できていたらどんなに楽だろう。
真っ黒な感情で押し潰されている今のわたしは、完璧主義で可愛い“のの”なんかじゃない。
……こんな自分、いやだ。
「……っ」
「……のの?」
ふと、柔らかくて透き通る声が上から響いた。
不思議そうに見つめようとしてくる綺麗な顔を、拒否するようにぱっと俯く。
わたしは彼を避けていたのに、なんでそんなに優しい声なの?
琉唯くんはわたしに怒っているんでしょ?
「ののちゃん?どうしたの?」
加えて心配をかけてしまっている美奈さんに、申し訳ない気持ちと真っ黒な感情が合わさる。
「…っ、すみません、先に楽屋戻ってますね……っ」
出来るだけ明るい声を振り絞って、その場から逃げるように駆け出した。
でもひとりになることに必死だったから、気づかなかったんだ。
キイ、と扉を開けて、誰もいないことに安堵した
ーーー瞬間、パシッと手首を捕まれてだ。
「……っねえ、なんで逃げんの、」
ーー琉唯くんがわたしを追って来ていたことに。