ふたりだけの秘密、甘いこと。
いま風邪流行ってるのかな……っわ、
突然バッグの中から感じた振動の正体をすぐに取り出してタップする。
「っはい、もしもーー「遅ーい!どこで道草食ってのさあー!?あともう少しで始まるわよ!?」
携帯の向こう側は少し怒り気味のマネージャーさんだった。
「う……ごめんなさい、すぐに向かいますーっ!」
時計を確認すると、あと15分前。
もうそんな時間だったの……!?
やばいやばい、遅れちゃう……っ!
迷惑はかけられないよ……っ。
「わたし、もう行きますね。ありがとうございました……っ!」
駆け出す前、笑顔を向けてたたっと軽い動きでその場を去る。
ーー瞬間、
「ーーっ、あの、頑張ってください!ののちゃん……っ!」
手をぎゅっと胸の前で握りながら伝えてくれた応援に、思わず顔が綻んだ。
「ーーはいっ!ありがとう!」
時間はめちゃくちゃ危なくて急いでいるのに、駆け出す足取りはとっても軽くて、飛んでいけそうな程だった。
◦
∗
「……っめ、めちゃくちゃ可愛かったね……」
「やばい、顔あっつい……」
「あれは惚れるわ」
なんて、彼女たちが惚けているのには気づかなかったけれど。