やっぱり中身で勝負
「ハハ。ところで、お母さんの癌は抗がん治療すれば治るの?」
「う〜ん 癌って【5年生存率】って言葉があるんだけど、手術後5年経って転移が無ければ完治ってなるの」
「5年…」
「うん。ウチのお母さんはちょっと進行してたからちょっとキツイ抗がん剤でね。まずは半年かな」
「お母さんもだけど、寺田さんも仕事しながらの看病で大丈夫? オレで役に立つことあったら言ってよ」
「ありがとう。まぁ私が頑張らなきゃ!」
「ちょっと待って!
自分だけ頑張ればいいって…ちょっと違くない?」
「え? でも…」
「あのさ〜、寺田さんがキャパオーバーしたらお母さんはどうなる?
自分だけが1人で頑張ったとして、もし寺田さんが倒れでもしたら結局、職場もお母さんにも迷惑かける事にならない?」
「……」
一郎が沙緒里の方をチラッと見ると、沙緒里は涙を流していた。
「え、寺田さん?オレ…あ、あのオレは…」
「泣いちゃってごめん… 戸山くんの言う通りだと思ってたの…
でも、親戚も遠くて頼れないし私1人で何とか頑張らないとって…
でもどうしたら良いのか不安で押しつぶされそうになってて…
誰にも相談できなくて…」
「……」
「だから、戸山くんが私の事を考えて言ってくれた事が嬉しかったというか、1人で悩まず人に頼っても良いんだ!って思えたから…
戸山くん、ありがとう……」とハンカチで目頭を押さえている沙緒里。
そんな沙緒里の姿に愛おしさと自分が力になってあげたいと思った一郎だった。