やっぱり中身で勝負
「今年は何処にも連れて行けなくてごめんな」
「ううん。お母さんの治療の事もあるし、今年は私も無理だから…。」
「お母さんはどうなの?とりあえず半年だっけ?」
「うん。とりあえず半年間だね。その後も3ヶ月おきに検査するみたい」
「そうなんだ…」
「敦志、何かあるの?」
「うん? いや何もないよ!
沙緒里は偉いなと思ってさ〜。
仕事もしてお母さんの事もきちんと助けてさ〜。
本当に沙緒里はスゲェよ。偉い!!」
「そんな事ないよ。家族の事だもん…」
「俺さ、年次的にもかなり仕事を頑張らないといけない時でさ〜、沙緒里の手助け出来ないけど何とか頑張れよ」
「うん。敦志もお仕事大変なんだね。」
「ああ、同期のヤツらの中にはチラホラ海外赴任になったヤツも多くてさ。
俺も頑張らないとと思ってるんだ。
海外赴任は入行前からの目標だし!」
「そうなんだね。私は何も敦志の支えにならなくてごめんね」
「そんな事ないよ」
「敦志が海外かぁ… 例えばどんな所へ赴任するの?」
「え、ああ、イギリス、アメリカ、シンガポール、ベトナム? まぁ、いろいろ赴任先はあるかな」
「敦志って仕事しながら英語を勉強して偉いね」
「まぁ、海外目指してる人はみんなやってるし」
「でも、目標の為に頑張ってる敦志は凄いよ」
「そんな事ないよ。みんなやってるし」
沙緒里は、今日の敦志の会話や態度は将来結婚を考えている彼女に対するものではないと感じた。
お母さんが癌の手術をすると話しをした辺りから敦志が私の事を本当に好きなのかわからなくなっていた。
仕事優先っというか…
自分の事以外あまり関心がない人というか…
私やお母さんに対して心からの思いやりを感じない。