やっぱり中身で勝負
「戸山くんは【イチローコーチ】なの?」
「そう。時々週末の練習で子供たちに教えてるんだわ」
「ボランティアもしてるなんて…凄い!」
「凄くなんかないよ。オレらの頃のコーチが年とったから手伝ってくれって頼まれたからやってるだけさ。
あ〜、全部美味かった!ご馳走様でした。」
「いいえ、割烹ランチに比べたらヘボいお弁当ですみません。」
「いや、本当に美味かったよ!
食後のコーヒーはオレがご馳走するな!
自販機の缶コーヒーだけどさ!ハハハ」と言って椅子から立ち上がり、歩いて行った戸山くん。
さっきのショウくんとマサトくんの他にも5.6人の子供たちが戸山くんの後を追いかけて行った。
やっぱり、戸山くんは優しいから子供にも好かれるコーチなんだなぁ… と思いながらお弁当のお重を片付ける沙緒里。
戸山くんは10人くらいの男の子達を引き連れて戻ってきた。
「寺田さん。はい」
「ありがとう。いただきます。」
「あの〜!」と先ほどのショウくんが私に声を掛けてきた。
「はい?」
「お姉さんはイチローコーチの彼女ですか?」
「え! 違いますよ。同級生で、お友達です」
「お姉さんは、ラグビー好きですか?」
「ごめんなさい。今日初めてラグビーの試合を観にきました。」
「もう、オレの同級生を困らせるなよ!解散!!」
「え〜!!」
「ハイハイ、試合始まるからお母さんたちの所へ行く!!」
「は〜い」と男の子達はトボトボと戻って行った。