恋は秘密のその先に
「すごいわね、彼。私が通訳するつもりだったけど、全く出番なしだわ。あー、暇になっちゃった」
そう言ってカレンは明るく笑う。
文哉は、CEOとも対等にフランクに英語で会話していて、真里亜もそんな文哉に感心した。
カレンは本当にやることがなくなったらしく、真里亜に話しかけてくる。
「ねえ。阿部 真里亜の名前は、やっぱり残してあるの?」
「えっ?どういう意味ですか?」
「えーっと、ほら、日本語で何て言うんだっけ?あ、夫婦別姓!」
は?と、真里亜は瞬きを繰り返す。
「えっと、私の話ですか?」
「そうよ。阿部 真里亜って名前、結婚して変わっちゃうのはもったいないもの。どうしてるの?」
「いえ、あの。私、結婚してません」
「じゃあ、あれだ。事実婚!そうなんでしょ?」
「いえいえ。私は誰ともおつき合いしていませんし、結婚なんてまだまだ…」
カレンは、真里亜の話の途中で、えー?!と驚きの声を上げる。
「あなた達、つき合ってもいないの?」
「え?はい。単なる上司と秘書です」
「嘘でしょう?信じられない。二人でニューヨークまで来ておいて、恋人でもないなんて…」
カレンは、CEOと笑顔で話している文哉をじっと見る。
「なぜなの?こうして見ると、仕事が出来るいい男に見えるけど?」
「は?ええ。副社長は女性にもモテますし、仕事も出来ます」
「いや、でも。一緒にニューヨークに来たあなたにアプローチしないんでしょ?理解出来ないわ」
はあ…と、真里亜は気の抜けた返事をする。
「あのね、ここにいるスタッフ全員が、あなた達をカップルだと思ってるわよ。もちろんCEOもね」
「ええー?!どうしてですか?」
「どうしてって…。まあ、文化の違いかな?もしつき合ってないって知ったら、どうしてなんだ?彼は偏屈なのか?なんて聞かれるかも。ニューヨークまで一緒に来てくれた女性なのに、口説けないのか?情けないなって」
「そ、そんな…」
真里亜は思わず両手で頬を押さえる。
「どうしましょう。副社長がそんなふうに思われるなんて…。私、どうしたら」
「じゃあ、つき合ってるフリをするのね。彼にハニーって呼ばれたら、イエス、ダーリンって答えればいいのよ」
「は、は、は、ハニー?!」
真里亜はもはや仰け反って倒れそうになる。
「真里亜ってしか呼んでくれないの?」
「いえ、あの。おい、お前、としか」
はあーー?!と、今度はカレンが仰け反っている。
「おい、お前?!そんなの、昭和の初期で終わってると思ってたわ。私だったら、そんなふうに呼ばれた瞬間、ほっぺた引っぱたいて別れるわよ?」
「いえ、ですから。私は副社長とはおつき合いしていませんし…」
「それにしてもよ!ちょっと、日本は大丈夫?時代錯誤も甚だしいわ」
カレンは腕組みして、文哉を横目で睨みつける。
「いえ、あの。副社長は、私にとって素晴らしい方なんです。ですから、そんなふうに思わないでください」
「あなたがそう言えば言うほど、彼がますます悪者に見えてくるわ」
「ひえー!違うんです。あの、副社長はとても優しくて紳士的で、その、あっ!マフラーを貸してくれたり…」
必死で訴える真里亜に、カレンはジロリと視線を向ける。
「マフラーを貸してくれたー?!だから何よ」
「いえ、その。私にとっては、それで充分なんです」
「はあー?!マリア、あなたね、自分を卑下し過ぎよ。分かったわ、こうなったらフミヤをギャフンと言わせてあげる」
ギャフン?!って実際に使う人、初めて見ました、とは言えず、真里亜はとにかく大人しく黙ることにした。
そう言ってカレンは明るく笑う。
文哉は、CEOとも対等にフランクに英語で会話していて、真里亜もそんな文哉に感心した。
カレンは本当にやることがなくなったらしく、真里亜に話しかけてくる。
「ねえ。阿部 真里亜の名前は、やっぱり残してあるの?」
「えっ?どういう意味ですか?」
「えーっと、ほら、日本語で何て言うんだっけ?あ、夫婦別姓!」
は?と、真里亜は瞬きを繰り返す。
「えっと、私の話ですか?」
「そうよ。阿部 真里亜って名前、結婚して変わっちゃうのはもったいないもの。どうしてるの?」
「いえ、あの。私、結婚してません」
「じゃあ、あれだ。事実婚!そうなんでしょ?」
「いえいえ。私は誰ともおつき合いしていませんし、結婚なんてまだまだ…」
カレンは、真里亜の話の途中で、えー?!と驚きの声を上げる。
「あなた達、つき合ってもいないの?」
「え?はい。単なる上司と秘書です」
「嘘でしょう?信じられない。二人でニューヨークまで来ておいて、恋人でもないなんて…」
カレンは、CEOと笑顔で話している文哉をじっと見る。
「なぜなの?こうして見ると、仕事が出来るいい男に見えるけど?」
「は?ええ。副社長は女性にもモテますし、仕事も出来ます」
「いや、でも。一緒にニューヨークに来たあなたにアプローチしないんでしょ?理解出来ないわ」
はあ…と、真里亜は気の抜けた返事をする。
「あのね、ここにいるスタッフ全員が、あなた達をカップルだと思ってるわよ。もちろんCEOもね」
「ええー?!どうしてですか?」
「どうしてって…。まあ、文化の違いかな?もしつき合ってないって知ったら、どうしてなんだ?彼は偏屈なのか?なんて聞かれるかも。ニューヨークまで一緒に来てくれた女性なのに、口説けないのか?情けないなって」
「そ、そんな…」
真里亜は思わず両手で頬を押さえる。
「どうしましょう。副社長がそんなふうに思われるなんて…。私、どうしたら」
「じゃあ、つき合ってるフリをするのね。彼にハニーって呼ばれたら、イエス、ダーリンって答えればいいのよ」
「は、は、は、ハニー?!」
真里亜はもはや仰け反って倒れそうになる。
「真里亜ってしか呼んでくれないの?」
「いえ、あの。おい、お前、としか」
はあーー?!と、今度はカレンが仰け反っている。
「おい、お前?!そんなの、昭和の初期で終わってると思ってたわ。私だったら、そんなふうに呼ばれた瞬間、ほっぺた引っぱたいて別れるわよ?」
「いえ、ですから。私は副社長とはおつき合いしていませんし…」
「それにしてもよ!ちょっと、日本は大丈夫?時代錯誤も甚だしいわ」
カレンは腕組みして、文哉を横目で睨みつける。
「いえ、あの。副社長は、私にとって素晴らしい方なんです。ですから、そんなふうに思わないでください」
「あなたがそう言えば言うほど、彼がますます悪者に見えてくるわ」
「ひえー!違うんです。あの、副社長はとても優しくて紳士的で、その、あっ!マフラーを貸してくれたり…」
必死で訴える真里亜に、カレンはジロリと視線を向ける。
「マフラーを貸してくれたー?!だから何よ」
「いえ、その。私にとっては、それで充分なんです」
「はあー?!マリア、あなたね、自分を卑下し過ぎよ。分かったわ、こうなったらフミヤをギャフンと言わせてあげる」
ギャフン?!って実際に使う人、初めて見ました、とは言えず、真里亜はとにかく大人しく黙ることにした。