恋は秘密のその先に
「カレンさん!」

真里亜はカレンに駆け寄って声をかける。

「あの、ショールを返していただけますか?」
「あら、もったいない。せっかくあんなにモテてたのに」
「いえ、本当に必要なんです。お願いします」
「そうね、フミヤはもう充分自覚したみたいだし。はい、どうぞ」
「ありがとうございます!」

真里亜はカレンからショールを受け取ると、肩から掛けて胸と背中を隠し、急いで部屋を出た。

「副社長!」

通路の壁にもたれていた文哉を見つけると、慌ててそばに行く。

「大丈夫ですか?ご気分は?」
「大丈夫だ。心配するな」

文哉は、真里亜がショールを掛けていることにホッとして、いつもの落ち着いた口調に戻った。

「良かったです。あの、何か召し上がりますか?」
「ん?ああ、そうだな。お前は?何か食べたか?」
「いえ、まだ何も」
「そうか。じゃあ、おいで」

文哉は真里亜の肩を抱くと、そっと部屋のドアを開けて会場の中に促す。

大きなカーテンがタッセルでまとめられている横に椅子があり、文哉は真里亜をそこに座らせた。

「ここで待ってろ」
「はい」

料理が並ぶカウンターに行くと、文哉は真里亜が好きそうな物を選んでプレートに盛り付けた。

「どうぞ」
「ありがとうございます。副社長は?」
「今取ってくるよ」

もう一度カウンターへ行き、戻って来ると、真里亜は料理に手をつけずに待っていた。

「じゃあ食べるか」
「はい、いただきます」

カーテンの影で人目につかないその席で、二人はゆっくりと美味しい料理を味わう。

「副社長。CEOとのお話はいかがでしたか?」
「ああ。感触は良かったよ。詳しいことはあとで話すが、国際的なセキュリティシステム開発チームにAMAGIも入れてもらえそうだ」
「そうなんですね!すごい」
「これから社内で、またチームを立ち上げないとな。英語が堪能な人材と、システムエンジニアの人数も増やしたい」

それを聞いて、真里亜はふと藤田を思い出した。

「副社長。システムエンジニアを増やすのは、社内から選考するのもアリですか?」
「ん?そうだな。もちろんそれも考えよう。新入社員に1からAMAGIの経営理念を理解してもらうよりも、既に社員として働いてくれている人の方が好ましい。エンジニアとしての力量と本人の熱意次第で、即戦力になってもらえれば」
「そうですね」

真里亜は嬉しそうに頷く。

(藤田くん、チャンスだよ!がんばって掴み取ってね!)

心の中で、真里亜は藤田にエールを贈った。
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