恋は秘密のその先に
翌日も、二人は朝から街に出掛けた。

美術館をはしごして、軽く昼食を取ってからロックフェラーセンターのスケートリンクに行く。

「うわー、素敵!憧れだったんですよね、ここでスケートするの」

そう言うと真里亜は、スイスイと軽やかに滑り始める。

「お前、滑れるのか?」
「こう見えて大学では、体育会フィギュアスケート部だったんです」
「ええ?!そんな部活あるのか」
「はい。大学で始めたからそんなに上手くないですけどね」
「じゃあ、あれか?トリプルアクセル、飛べるのか?」
「飛べたら私、今ここにはいないと思いますよ?」

あはは!と文哉は笑い出す。

「そうだな。でも本当はもっと滑れるんだろう?俺に合わせなくてもいいぞ」
「じゃあ、副社長。手を貸してください」
「え?」

真里亜は左足でくるりとターンして向きを変えると、文哉と向かい合って手を取った。

「しっかり捕まっててくださいね」

そう言うと文哉の両手を握り、真里亜は後ろを見ながらバックで滑り始める。

「うわっ、すごいな」
「ええ。スピード上げると、風を切って気持ち良くないですか?」
「確かに」
「私、この感覚が大好きなんです。まるで飛んでるみたいな気がして。地上だと絶対体感出来ないですよね」
「そうだな。そうか、こんなにスピード出るものなんだ」
「それにしても、副社長。スピード上げても全然怖がらないんですね。素質ありますよ。一緒にアイスダンスでも始めませんか?」
「ぶっ!やめろ。俺はそんなキャラじゃない」
「あはは!確かに」
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