恋は秘密のその先に
翌日の12月23日。
街はいよいよクリスマスを目前にして賑わっている。

真里亜達は、午前中はクリスマス・マーケットを覗きながら、可愛い雑貨を見て回っていた。

立ち寄ったカフェでドリンクを注文すると、スタッフに名前は?と聞かれた。

「マリア」
と答えると、OK!と、カップにサラサラと名前を書かれる。

だが文哉が名乗ると、はあ?と聞き返されていた。

「お前はいいよな。どこの国でも分かりやすい名前で」
「そうですね。スペルも一緒ですし。副社長も、カフェなんですから本名を答えなくてもいいんじゃないですか?適当にニックネームでも」
「例えば?」
「んー、文哉だからフーとか?」
「お前な。名前聞かれてWhoって答えるなんて、ケンカ売ってるのかと勘違いされる」
「あはは、確かに。じゃあ、フレディは?」

フレディ?と、文哉は顔をしかめる。

「やだよ、フレディなんて。どのツラ下げて言ってんだって思われそう」
「いいじゃないですか。フレディなら聞き返されませんよ?」
「やめとく。俺には似合わん」

だが、昼食を食べに寄ったパンケーキショップで、またもや文哉は名前を聞き返される。

「Fu…? Sorry?」
「…Freddy」
「Oh ! OK」

ぷっ!と小さく吹き出す真里亜を、文哉はジロリと睨んでいた。
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