恋は秘密のその先に
「副社長。システムエンジニアの増員について、人事部に話をされたんですか?」
「え?ああ。年明けに全社員に募集をかけるつもりだから、その旨人事部の部長にメールで伝えたけど。それがどうかしたか?」
「私の同期、人事部に採用されましたけど、本当はシステムエンジニアを希望していたんです。いつか必ずAMAGIでシステムエンジニアになりたい。なってみせるって私に話してくれて。私が副社長の秘書に戻る時に背中を押してくれたのも彼なんです」
「…彼?」
文哉の心の片隅に、何かがチクリと突き刺さる。
「ええ。藤田くんっていうんですけど。今届いたメッセージに『エンジニアの増員について、部長から話を聞いた。チャレンジして必ずこのチャンスを掴んでみせる』って。私、嬉しくてもう…」
次の瞬間、文哉はメッセージを読んでいる真里亜の両手を掴み、後ろのベッドに押し倒した。
真里亜が驚いたように目を見開く。
その手からスマートフォンが離れてベッドに落ちた。
「…副社長?」
ポツリと呟く真里亜に覆いかぶさるようにして、文哉はグッと顔を近づける。
「誰がお前にそんな顔をさせるんだ?誰を想ってお前はそんなに優しく微笑むんだ?」
真里亜は息をするのも忘れて、目を見開いたまま身体を固くしている。
「他の男のことなんて考えるな。俺以外の誰にもそんな顔を見せるな。お前に触れていいのは俺だけだ」
「…どうして?」
「どうしてもだ」
そう言うと文哉は、更に真里亜に顔を近づけた。
唇が触れそうになる手前で止めると、低い声で真里亜に告げる。
「嫌ならよけろ」
そしてゆっくりと目を閉じ、真里亜の唇に自分の唇を寄せていく。
(絶対によけられる)
そう思っていたのに、やがて唇に触れる柔らかく温かい感触に、文哉は驚いて目を開いた。
ハッとして真里亜から離れる。
(ど、どうして…?)
真里亜は瞳を潤ませて、はあ…と肩で息をしている。
その艶めかしさに、文哉はめまいがしそうになった。
「なぜよけなかった?!」
思わず強い口調で問い正す。
「…嫌じゃ、なかったから」
「え?」
「嫌じゃなかったからです。副社長にキスされるのが」
はっきりと真里亜が答えた次の瞬間、文哉は堪らないというように切なくギュッと顔をしかめると、今度は奪うように真里亜に口づけた。
何度も、何度も…。
まるで言葉に出来ない気持ちをぶつけるかのように。
「真里亜…」
耳元でささやき、またキスをする。
いつの間に自分は、こんな激情を抱えていたのだろう。
いつの間に自分は、こんなにも彼女に惹かれていたのだろう。
考えても分からない。
だが、これだけは確かだ。
(俺はこんなにも真里亜を愛している)
「え?ああ。年明けに全社員に募集をかけるつもりだから、その旨人事部の部長にメールで伝えたけど。それがどうかしたか?」
「私の同期、人事部に採用されましたけど、本当はシステムエンジニアを希望していたんです。いつか必ずAMAGIでシステムエンジニアになりたい。なってみせるって私に話してくれて。私が副社長の秘書に戻る時に背中を押してくれたのも彼なんです」
「…彼?」
文哉の心の片隅に、何かがチクリと突き刺さる。
「ええ。藤田くんっていうんですけど。今届いたメッセージに『エンジニアの増員について、部長から話を聞いた。チャレンジして必ずこのチャンスを掴んでみせる』って。私、嬉しくてもう…」
次の瞬間、文哉はメッセージを読んでいる真里亜の両手を掴み、後ろのベッドに押し倒した。
真里亜が驚いたように目を見開く。
その手からスマートフォンが離れてベッドに落ちた。
「…副社長?」
ポツリと呟く真里亜に覆いかぶさるようにして、文哉はグッと顔を近づける。
「誰がお前にそんな顔をさせるんだ?誰を想ってお前はそんなに優しく微笑むんだ?」
真里亜は息をするのも忘れて、目を見開いたまま身体を固くしている。
「他の男のことなんて考えるな。俺以外の誰にもそんな顔を見せるな。お前に触れていいのは俺だけだ」
「…どうして?」
「どうしてもだ」
そう言うと文哉は、更に真里亜に顔を近づけた。
唇が触れそうになる手前で止めると、低い声で真里亜に告げる。
「嫌ならよけろ」
そしてゆっくりと目を閉じ、真里亜の唇に自分の唇を寄せていく。
(絶対によけられる)
そう思っていたのに、やがて唇に触れる柔らかく温かい感触に、文哉は驚いて目を開いた。
ハッとして真里亜から離れる。
(ど、どうして…?)
真里亜は瞳を潤ませて、はあ…と肩で息をしている。
その艶めかしさに、文哉はめまいがしそうになった。
「なぜよけなかった?!」
思わず強い口調で問い正す。
「…嫌じゃ、なかったから」
「え?」
「嫌じゃなかったからです。副社長にキスされるのが」
はっきりと真里亜が答えた次の瞬間、文哉は堪らないというように切なくギュッと顔をしかめると、今度は奪うように真里亜に口づけた。
何度も、何度も…。
まるで言葉に出来ない気持ちをぶつけるかのように。
「真里亜…」
耳元でささやき、またキスをする。
いつの間に自分は、こんな激情を抱えていたのだろう。
いつの間に自分は、こんなにも彼女に惹かれていたのだろう。
考えても分からない。
だが、これだけは確かだ。
(俺はこんなにも真里亜を愛している)