恋は秘密のその先に
「いやー、二人ともご苦労様。長旅、疲れただろう?早速来てもらって悪いな」

社長室に挨拶に行き、手土産を渡すと、社長はニコニコと二人を労った。

「キュリアス USAのCEOとも電話で話したよ。フミヤとマリアになら任せられると言って、正式に国際セキュリティシステム開発プロジェクトにAMAGIを招いてくださることになった。すごい快挙じゃないか、よくやってくれたな」
「ありがとうございます」

二人はニューヨークでCEOのジョンと話した内容、今後の予定、社内でのチームの立ち上げなどを、資料を使って社長に説明する。

「なるほど。他の国を代表してプロジェクトに加わっている企業も、そうそうたるものだな。ここにAMAGIが参加させてもらえるのか。身が引き締まるな」
「はい。必ず結果を残せるよう、全力で取り組んで参ります」
「ああ、頼んだぞ。それからこの件は、世間にはトップシークレットだ。なにせ、ハッカーに対抗するプロジェクトだからな。万が一知られて、先手を打たれるようなことがあってはならない。くれぐれも情報漏洩には気をつけるように」
「かしこまりました」

二人がしっかり頷いてみせると、社長はソファに背を預け、急に別人のようににこやかになる。

「仕事の話は終わりだ。それで?私に何か報告は?」

は?と、文哉は思わず聞き返す。

「仕事以外の報告、ですか?」
「そうだ。文哉の父親として、聞いておきたい」
「えっと、何のお話でしょうか?」
「おいおい。私に隠し通せるとでも?これでも私は、社員20万人を抱えるAMAGIの社長だぞ?何でもお見通しだからな。それとも何か?トップシークレットにしておきたいのか?」

もはや文哉は、返す言葉が見つからない。

社長、いや、父親が、何の話をしているのかさっぱり見当がつかず、首をひねる。

「なんだ、まだまだお子ちゃまの域なのか。初々しくていいな。正式に決まったら、きちんと報告しなさい。楽しみにしているよ」

そう言うと、妙にご機嫌な様子で社長はゆったりとコーヒーを口にした。
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