恋は秘密のその先に
翌日の12月29日。

真里亜は住谷と一緒に、また贈り物の手配とお礼状の作成、そして年賀状の送付確認に追われていた。

「よし。これでひと通り終わったかな?」
「はい。ありがとうございました、住谷さん」
「他は?何か手伝うことある?」
「いえ、もう充分です。住谷さんも、年末年始ゆっくりしてくださいね。今年一年、本当にお世話になりました。来年もどうぞよろしくお願いいたします」

良いお年を、と挨拶して、真里亜と文哉は住谷を見送った。

「真里亜。お正月は実家に帰るの?」

二人きりになった副社長室で、文哉が声をかける。

「特に決めてないですけど、数日間は帰る予定です。副社長は、いつから休暇に入るんですか?」
「んー、年明けの準備が終わりそうにないからなあ。ずっとここに泊まったままかも…」

ええ?!と真里亜は驚く。

「年越しもここで?」
「ああ、多分。真里亜は実家でゆっくりしておいで」

すると真里亜は、黙ってうつむいた。

「どうかした?真里亜」
「えっと、あの…」
「ん?」

真里亜は言いにくそうに、そっと文哉の顔を上目遣いに覗き込む。

「年越しそば、ここで一緒に食べてもいい?」
「えっ?」

(年越し…。それは大晦日、新年へと日付が変わる瞬間を一緒に。つまり、その…)

文哉は真顔になり、頭の中で真剣に考える。

「ご迷惑、ですか?」

おずおずと聞いてくる真里亜に、文哉はブンブン首を振る。

「まさか!とんでもない」
「良かった!じゃあ明日も出勤して、副社長室の大掃除しますね」
「いいよ、大掃除なんて。ゆっくり休んでて」
「でも…、私も会いたいし」
「え?誰に?」

思わず真面目に聞くと、真里亜は拗ねたようにうつむいた。

「え、もしかして俺に?!」

コクリと真里亜が頷く。

(そんな…。真里亜からそんなふうに言ってくれるなんて)

「分かった。ありがとう!待ってるから」
「はい!」

真里亜は嬉しそうに微笑んだ。
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