恋は秘密のその先に
色々な国のメンバーと話し合いながら、一つのプロジェクトを進めていく…。
それが如何に大変なことであるかを、皆はヒシヒシと感じていた。

言葉が上手く伝わらないだけでなく、感覚や文化の違い、そして見え隠れする互いのプライドや思惑。

技術面でも、精神面でも厳しい毎日が続いた。

文哉は、チームメンバーの様子を見ながら、励ましたり労ったり、あるいは鼓舞したりと、常に最善の声かけをしていく。

そしてジョンも、国同士の雰囲気が悪くなりかけると明るくジョークを言ったり、このプロジェクトが終わったら、君達は世界から一気に賞賛を浴びるよ。盛大なパーティーを開こう!と盛り上げた。

真里亜も、出来る限りのことはやる!と、毎日分かりやすく資料を作り、カレンとやり取りしてアメリカのメンバーの本音を聞き出したりした。

文哉も真里亜も、住谷も藤田も、チームメンバーの全員が心を一つにしてひたむきに努力した。

時は過ぎ、気がつけば真夏の8月。

対外的には何も発表されないまま、水面下で進められていた国際的なプロジェクト。

それが遂に、キュリアス USAのCEOであるジョンから発表される日がやって来た。

マスコミを呼んで記者会見を開き、全世界にインターネットで配信される。

「時代は今、デジタルの世界だ。コンピュータテクノロジーがビジネスの中心だ。我々がもっとも警戒しなければならないのは、現金を盗む泥棒ではない。コンピュータをハッキングするハッカーだ。だが、その存在に怯える日々も終わる。我々は国際的なプロジェクトを進め、各国のトップ企業とチームを組んで新しいセキュリティシステムを開発した。現時点でこのシステムをハッキング出来る者はいないと断言しよう。そしてこれからも、我々は日々改善を重ね、対抗するハッカーに立ち向かっていく。それを今日、ここに宣言する」

まるで大統領のような堂々と力強い演説に、一斉に拍手が起こった。

「それでは、このプロジェクトに加わってくれた我々の信頼する仲間を紹介する。まずは、イギリスから」

ジョンの後ろにあった大きなモニター画面がパッと切り替わり、イギリスチームのメンバーが映し出される。

皆、晴れやかな笑顔で手を振っていた。
他の国も、次々と紹介される。

「そして日本から。AMAGIコーポレーション!」

最後に日本が紹介され、AMAGIの会議室に集まったチームメンバーが映し出された。

皆で、うわー、映ってる!とテンション高く笑顔で手を振る。

「我々はこれからも、この最高のチームメンバーと共に、最強のシステムを常にアップデートしていく。どうぞご期待ください」

自信に満ち溢れた笑みを浮かべながら、ジョンは最後の言葉で締めた。
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