恋は秘密のその先に
翌日の9月6日。
ジョンが開いてくれたパーティーは、とびきりゴージャスな会場だった。
男性はタキシード、数少ない女性も華やかなドレスで着飾っている。
文哉に、肌を見せるな!と念を押されたものの、カレンの、日本女性の代表として、ダサいって思われちゃだめよ、の言葉も気になる。
真里亜は迷って、今回日本から着物を持って来ていた。
AMAGIのチームの紅一点だった真里亜が、薄いピンク色の桜の着物で会場に現れると、各国の男性陣が一斉に目を見開いた。
「アベ・マリア、なんて美しいんだ」
「もう目が眩みそうだよ」
真里亜はあっという間に取り囲まれ、写真を撮られたり握手を求められたり、手の甲にキスをされたりと、全く身動きが取れなくなる。
にこやかに応じるものの、真里亜は横から突き刺さる文哉の視線が恐ろしい。
(でもちゃんと、肌は見せてませんからねー!)
どうやら文哉も、それを分かっているからこそ、我慢して見守っているらしかった。
やがてジョンがマイクを手に乾杯の音頭をとると、文哉はすかさず真里亜を男性陣の輪の中から連れ出した。
「ふう、やれやれ」
ひと安心するが、文哉が他のゲストに話しかけられた隙に、またもや真里亜は周りを囲まれる。
「ビジネスの話をしよう」
と言われて名刺を出されると、真里亜も無下には出来ない。
名刺入れから自分の名刺を取り出して、相手に差し出す。
すると相手は、ワオ!と驚いて名刺を見つめる。
(あ、そうだった)
今回真里亜は、千代紙で小さな鶴を折り、名刺の一角に貼って飾っていた。
外国の方に喜んでいただけたら、と思ってそうしていたのだが、どうやら今は余計なことだったようだ。
「なんてファンタスティックなんだ。これはアベ・マリアが作ったのか?」
そうですけど、日本人なら誰でもみんなこれくらい折れますよ。
と英語で言ったが、あまりよく伝わらなかったらしい。
「こんなに美しいものを作れるとは。なんて素晴らしい女性なんだ、アベ・マリアは」
気がつくと、俺も!俺にも!と、真里亜は更に多くの男性に囲まれ、名刺をねだられた。
「真里亜!」
しばらくして聞こえてきた声に、真里亜は、ひえっ!と首をすくめる。
Excuse me. と近づいて来た文哉にガシッと肩を掴まれ、あーれー!と連れ出される。
「真里亜!なんだってあんなにも大勢の男に取り囲まれてるんだ?」
壁際に連れて来られ、文哉に問い詰められた真里亜は、ごめんなさいと肩を落とす。
「名刺交換だったから、軽くあしらえなくて。本当にごめんなさい」
文哉は小さくため息をつく。
「そうか、ごめん。そうだよな、各国のトップ企業とコネクション作る大事なチャンスだよな。真里亜、俺が悪かった。でも、とにかく心配なんだ。というより、俺の理性がもつかどうか…。どうしよう。嫉妬のあまり、殴りかかったりしないかな?」
ひょえー!と真里亜は恐ろしさにおののく。
「そ、それは…。それだけはおやめください、副社長」
「ああ、なんとかがんばる。真里亜、出来るだけそばにいてくれ」
「かしこまりました。もう片時もおそばを離れません」
かくして真里亜は、文哉の後ろを半歩下がってついて行く、奥ゆかしい日本女性を決め込んだ。
ジョンが開いてくれたパーティーは、とびきりゴージャスな会場だった。
男性はタキシード、数少ない女性も華やかなドレスで着飾っている。
文哉に、肌を見せるな!と念を押されたものの、カレンの、日本女性の代表として、ダサいって思われちゃだめよ、の言葉も気になる。
真里亜は迷って、今回日本から着物を持って来ていた。
AMAGIのチームの紅一点だった真里亜が、薄いピンク色の桜の着物で会場に現れると、各国の男性陣が一斉に目を見開いた。
「アベ・マリア、なんて美しいんだ」
「もう目が眩みそうだよ」
真里亜はあっという間に取り囲まれ、写真を撮られたり握手を求められたり、手の甲にキスをされたりと、全く身動きが取れなくなる。
にこやかに応じるものの、真里亜は横から突き刺さる文哉の視線が恐ろしい。
(でもちゃんと、肌は見せてませんからねー!)
どうやら文哉も、それを分かっているからこそ、我慢して見守っているらしかった。
やがてジョンがマイクを手に乾杯の音頭をとると、文哉はすかさず真里亜を男性陣の輪の中から連れ出した。
「ふう、やれやれ」
ひと安心するが、文哉が他のゲストに話しかけられた隙に、またもや真里亜は周りを囲まれる。
「ビジネスの話をしよう」
と言われて名刺を出されると、真里亜も無下には出来ない。
名刺入れから自分の名刺を取り出して、相手に差し出す。
すると相手は、ワオ!と驚いて名刺を見つめる。
(あ、そうだった)
今回真里亜は、千代紙で小さな鶴を折り、名刺の一角に貼って飾っていた。
外国の方に喜んでいただけたら、と思ってそうしていたのだが、どうやら今は余計なことだったようだ。
「なんてファンタスティックなんだ。これはアベ・マリアが作ったのか?」
そうですけど、日本人なら誰でもみんなこれくらい折れますよ。
と英語で言ったが、あまりよく伝わらなかったらしい。
「こんなに美しいものを作れるとは。なんて素晴らしい女性なんだ、アベ・マリアは」
気がつくと、俺も!俺にも!と、真里亜は更に多くの男性に囲まれ、名刺をねだられた。
「真里亜!」
しばらくして聞こえてきた声に、真里亜は、ひえっ!と首をすくめる。
Excuse me. と近づいて来た文哉にガシッと肩を掴まれ、あーれー!と連れ出される。
「真里亜!なんだってあんなにも大勢の男に取り囲まれてるんだ?」
壁際に連れて来られ、文哉に問い詰められた真里亜は、ごめんなさいと肩を落とす。
「名刺交換だったから、軽くあしらえなくて。本当にごめんなさい」
文哉は小さくため息をつく。
「そうか、ごめん。そうだよな、各国のトップ企業とコネクション作る大事なチャンスだよな。真里亜、俺が悪かった。でも、とにかく心配なんだ。というより、俺の理性がもつかどうか…。どうしよう。嫉妬のあまり、殴りかかったりしないかな?」
ひょえー!と真里亜は恐ろしさにおののく。
「そ、それは…。それだけはおやめください、副社長」
「ああ、なんとかがんばる。真里亜、出来るだけそばにいてくれ」
「かしこまりました。もう片時もおそばを離れません」
かくして真里亜は、文哉の後ろを半歩下がってついて行く、奥ゆかしい日本女性を決め込んだ。