恋は秘密のその先に
「ギャー!もう7時半!」

いつの間にか眠ってしまった次の日は、大抵寝坊するものだ。

真里亜は、とにかく慌ててシャワーを浴びると、大急ぎで着替えて軽くメイクをしてから部屋を飛び出した。

「あーもう!今後の身の振り方を考えたかったのに、そんな暇もない!」

駅までダッシュして、なんとかいつもの電車に乗り込む。

(朝ご飯抜きか…。こっそりデスクに忍ばせてあるゼリーとお菓子で凌ごう)

吊り革に掴まりながら、早くも気が重くなる。

会社に着き副社長室の前まで来ると、よし!と気合いを入れてからドアをノックして入った。

「おはようございます…って、あら?」

いつも目に飛び込んでくる鬼軍曹の姿が見えない。

「え?どうしたのかしら」

もう一度時計を確認すると、8時半ちょうど。
いつもなら、既に出社してデスクワークをしているはずだった。

席を外しているだけかと思ったが、きちんと整えられた副社長のデスクは、ノートパソコンも閉じられたままだ。

「まだ出社してないの?珍しいな」

すると、コンコンとノックの音がして真里亜は、はいと返事をする。

入って来たのは、住谷だった。
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