恋は秘密のその先に
「それでは、本日のご予定をお伝えいたします」
あのあと、パリッとしたスーツ姿で何事もなかったかのように副社長が現れ、いつものように朝の業務連絡が行われる。
「まず9時半から社長との会談、そしてそのまま役員の方々とランチミーティングを行います。13時からは取り引き先の訪問が2件…」
タブレットを手に話す住谷と、黙ってパソコンを操作している副社長を、真里亜は代わる代わる見比べてしまう。
(お二人とも、今どんな気持ちなんだろう。いいなー、愛する人と毎日一緒に仕事が出来るなんて。会社に行くのもちっとも苦痛じゃないわよね。羨ましい)
「…阿部さん?」
ふいに住谷に呼ばれて、真里亜はハッと我に返る。
「あ、は、はい!」
「どうかしましたか?」
「え、いえ、何も」
「そうですか?なんだか心ここにあらずって感じでしたけど」
「あ、すみません。少し考え事をしてしまって…。えっと、予定は変更なしですよね?」
すると、不機嫌そうな副社長の声がした。
「仕事に身が入らないなら、ここにいても意味がない。帰ってくれ」
う…、と真里亜が言葉に詰まると、住谷が咎めるように副社長を振り返った。
「そのような言い方は、いかがなものかと思いますが」
「どこがだ。当然のことを言ったまでだ」
「相手の気持ちになってください。言われた方は傷つきますよ。ましてや阿部さんは女性ですし、もう少し優しく…」
「いえ!あの、副社長のおっしゃる通りです」
慌てて真里亜が口を挟むと、阿部さん?と、住谷が訝しげに振り向く。
「私が悪かったんです。ですから、どうかケンカしないでください。私のせいでお二人の仲が悪くなるなんて、申し訳なくて…」
小さくなる真里亜に、住谷は、ん?と首をひねる。
「とにかく!あの、申し訳ありませんでした。以後、気をつけます。では郵便物のチェックをして来ますね」
真里亜は立ち上がると、そそくさと部屋をあとにした。
あのあと、パリッとしたスーツ姿で何事もなかったかのように副社長が現れ、いつものように朝の業務連絡が行われる。
「まず9時半から社長との会談、そしてそのまま役員の方々とランチミーティングを行います。13時からは取り引き先の訪問が2件…」
タブレットを手に話す住谷と、黙ってパソコンを操作している副社長を、真里亜は代わる代わる見比べてしまう。
(お二人とも、今どんな気持ちなんだろう。いいなー、愛する人と毎日一緒に仕事が出来るなんて。会社に行くのもちっとも苦痛じゃないわよね。羨ましい)
「…阿部さん?」
ふいに住谷に呼ばれて、真里亜はハッと我に返る。
「あ、は、はい!」
「どうかしましたか?」
「え、いえ、何も」
「そうですか?なんだか心ここにあらずって感じでしたけど」
「あ、すみません。少し考え事をしてしまって…。えっと、予定は変更なしですよね?」
すると、不機嫌そうな副社長の声がした。
「仕事に身が入らないなら、ここにいても意味がない。帰ってくれ」
う…、と真里亜が言葉に詰まると、住谷が咎めるように副社長を振り返った。
「そのような言い方は、いかがなものかと思いますが」
「どこがだ。当然のことを言ったまでだ」
「相手の気持ちになってください。言われた方は傷つきますよ。ましてや阿部さんは女性ですし、もう少し優しく…」
「いえ!あの、副社長のおっしゃる通りです」
慌てて真里亜が口を挟むと、阿部さん?と、住谷が訝しげに振り向く。
「私が悪かったんです。ですから、どうかケンカしないでください。私のせいでお二人の仲が悪くなるなんて、申し訳なくて…」
小さくなる真里亜に、住谷は、ん?と首をひねる。
「とにかく!あの、申し訳ありませんでした。以後、気をつけます。では郵便物のチェックをして来ますね」
真里亜は立ち上がると、そそくさと部屋をあとにした。