恋は秘密のその先に
第五章 パーティー
「それでは本日のご予定をお伝えいたします」
またいつもの朝を迎えた。
住谷の声を聞きながら、真里亜は自分のタブレットの予定表と一致しているかを確認する。
「…それから、19時からはコスモインターナショナルの新社長就任記念パーティーとなっております」
本日は以上です、と住谷がタブレットから顔を上げる。
確認を終えた真里亜も同じように顔を上げると、阿部さん、と住谷が声をかけてきた。
「はい、何でしょう」
「パーティーの支度があるので、阿部さんは16時にここを出発していただきたいです」
え?と真里亜は首を傾げる。
「私だけでしょうか?副社長は?」
「副社長は、その後17時半に合流していただきます。女性は身支度に時間がかかりますので、阿部さんだけ先に私が車でお送りしますね」
「あ、はい。ありがとうございます」
真里亜は、あまり深く考えずに頷いた。
その日の業務を順調に終え、やがて16時になると、真里亜は住谷の運転する車に乗り込む。
「では出発しますね」
「はい、よろしくお願いいたします」
走り出してしばらくすると、住谷が妙にニコニコと真里亜に話しかけてきた。
「阿部さん。最近の副社長の様子はどうですか?」
「あ、はい。それが、時折私に声をかけてくださるようになったんです。私の仕事上がりも遅くとも20時頃には、帰れ…いえ、帰りなさいと促してくださいます」
「へえー、あの副社長が?どうしたんでしょうね」
「ええ。私も最初は不思議で仕方なくて…。でもそれはやはり、プライベートが充実しているからなのではないかと思います」
プライベート?と、住谷はバックミラー越しに後部座席の真里亜に尋ねる。
「副社長のプライベートとは?何が充実しているのですか?」
「えっ!そ、それはやはり…。その、恋の行方が良い方向に…」
「恋?!」
住谷は大きな声を上げて目を見開く。
「ふ、副社長が恋を?!阿部さん、あなたは副社長の恋愛をご存知なんですか?」
「え、あ、はい。存じているというか、分かってしまったというか…。すみません、住谷さん」
「は?なぜ私に謝るのですか?」
「それはだって…。良い気分はしませんよね?あ!でもどうぞご心配なく。私、決して他言はいたしません。それだけはお約束します!」
はあ…と気の抜けた返事をしてから、住谷はジワジワと笑いが込み上げてきた。
(なんだなんだ?片やスパイで片や恋?おもしろくなってきたなー)
ワクワクした気持ちでハンドルを握り、住谷は行きつけのブティックの前で車を停めた。
またいつもの朝を迎えた。
住谷の声を聞きながら、真里亜は自分のタブレットの予定表と一致しているかを確認する。
「…それから、19時からはコスモインターナショナルの新社長就任記念パーティーとなっております」
本日は以上です、と住谷がタブレットから顔を上げる。
確認を終えた真里亜も同じように顔を上げると、阿部さん、と住谷が声をかけてきた。
「はい、何でしょう」
「パーティーの支度があるので、阿部さんは16時にここを出発していただきたいです」
え?と真里亜は首を傾げる。
「私だけでしょうか?副社長は?」
「副社長は、その後17時半に合流していただきます。女性は身支度に時間がかかりますので、阿部さんだけ先に私が車でお送りしますね」
「あ、はい。ありがとうございます」
真里亜は、あまり深く考えずに頷いた。
その日の業務を順調に終え、やがて16時になると、真里亜は住谷の運転する車に乗り込む。
「では出発しますね」
「はい、よろしくお願いいたします」
走り出してしばらくすると、住谷が妙にニコニコと真里亜に話しかけてきた。
「阿部さん。最近の副社長の様子はどうですか?」
「あ、はい。それが、時折私に声をかけてくださるようになったんです。私の仕事上がりも遅くとも20時頃には、帰れ…いえ、帰りなさいと促してくださいます」
「へえー、あの副社長が?どうしたんでしょうね」
「ええ。私も最初は不思議で仕方なくて…。でもそれはやはり、プライベートが充実しているからなのではないかと思います」
プライベート?と、住谷はバックミラー越しに後部座席の真里亜に尋ねる。
「副社長のプライベートとは?何が充実しているのですか?」
「えっ!そ、それはやはり…。その、恋の行方が良い方向に…」
「恋?!」
住谷は大きな声を上げて目を見開く。
「ふ、副社長が恋を?!阿部さん、あなたは副社長の恋愛をご存知なんですか?」
「え、あ、はい。存じているというか、分かってしまったというか…。すみません、住谷さん」
「は?なぜ私に謝るのですか?」
「それはだって…。良い気分はしませんよね?あ!でもどうぞご心配なく。私、決して他言はいたしません。それだけはお約束します!」
はあ…と気の抜けた返事をしてから、住谷はジワジワと笑いが込み上げてきた。
(なんだなんだ?片やスパイで片や恋?おもしろくなってきたなー)
ワクワクした気持ちでハンドルを握り、住谷は行きつけのブティックの前で車を停めた。