恋は秘密のその先に
「では阿部さん。あとで副社長をお連れしますね。先にお支度なさっていてください」
「はい、ありがとうございました」
住谷を見送ってから、真里亜はブティックのスタッフに案内されて中に入る。
「うわあ、なんて素敵なドレス」
ガラスのショーケースには、色とりどりの美しいドレスがズラリと並んでおり、真里亜は思わずうっとりと眺めた。
「お気に召したドレスはございますか?」
スタッフににこやかに尋ねられ、真里亜はええ?と驚く。
「このドレスを着るのですか?私が?」
「はい。パーティーのお支度をと、住谷様より仰せつかっております」
いやいや、なぜ私がドレスを?と、真里亜は首をひねる。
前回、企業懇親会に出席した時も自分はビジネススーツだったし、秘書ならそれが当たり前だ。
「あの、本当に私、こんなドレスを着るなんて…」
「まあ。でしたらわたくし共にお任せいただいても構いませんか?あまりゆっくりするお時間もありませんし…」
「あ、そうですよね。すみません。お願いいたします」
「かしこまりました」
ご迷惑になってはいけないと、真里亜は大人しく言われるがままになる。
促されてドレッサーの前に座ると、まずはヘアメイクを整えてもらった。
メイクは派手ではないのに目がぱっちりと大きく見え、チークやリップの色も優しい印象だ。
両サイドの髪を編み込んでからアップにまとめたヘアスタイルも、どこぞのお嬢様のような雰囲気で、真里亜はまじまじと鏡の中の自分を見つめる。
「さあ、ではこちらにお着替えを」
用意されていたのは、薄いピンクでスカートがふんわり広がるロングドレス。
「いやいやいや。私、こんな色絶対似合いませんから!」
「そうおっしゃらずに、さあ。お時間も迫ってますし」
それを言われると仕方ない。
渋々着替えると、ヒールの高いシューズを履いてフィッティングルームを出る。
「まあ!なんてお美しい」
スタッフの言葉に、いや、それはお世辞でしょうと思いながら、真里亜はとにかく足元に気をつける。
「あの、もう少しヒールの低いシューズはありませんか?」
「あら、よくお似合いですのに。それに天城 文哉様の隣に並ばれるのですよね?でしたら、これくらいの高さはあった方がよろしいかと」
「ですが、履き慣れていないので転びそうで…」
「それは大丈夫ですわ。天城様がエスコートしてくださいますから」
は?!と真里亜は声を上げる。
(副社長がエスコート?!そんな恐ろしい。腕をひねり上げられるか、もしくは足を踏みつけられるか…。あ、そう言えば私、副社長の足を踏んづけたことあったっけ)
企業懇親会で名前を間違われ、思わず足を踏んだことを思い出す。
今思うと恐ろしい、と両手で頬を押さえていると、スタッフがネックレスやイヤリングも着けてくれた。
その時コンコンとノックの音がして、スタッフが開けたドアから住谷が入って来た。
「失礼します。阿部さん、いかがです…おお!」
真里亜をひと目見ると、住谷は驚いたように固まっている。
「あの、住谷さん。大丈夫でしょうか?私」
「え?ああ、もちろん。大丈夫ですとも。いやー、これは楽しみですね。さあ、参りましょう」
何が楽しみなんだ?と思いながら、真里亜は住谷に続いて部屋を出た。
「はい、ありがとうございました」
住谷を見送ってから、真里亜はブティックのスタッフに案内されて中に入る。
「うわあ、なんて素敵なドレス」
ガラスのショーケースには、色とりどりの美しいドレスがズラリと並んでおり、真里亜は思わずうっとりと眺めた。
「お気に召したドレスはございますか?」
スタッフににこやかに尋ねられ、真里亜はええ?と驚く。
「このドレスを着るのですか?私が?」
「はい。パーティーのお支度をと、住谷様より仰せつかっております」
いやいや、なぜ私がドレスを?と、真里亜は首をひねる。
前回、企業懇親会に出席した時も自分はビジネススーツだったし、秘書ならそれが当たり前だ。
「あの、本当に私、こんなドレスを着るなんて…」
「まあ。でしたらわたくし共にお任せいただいても構いませんか?あまりゆっくりするお時間もありませんし…」
「あ、そうですよね。すみません。お願いいたします」
「かしこまりました」
ご迷惑になってはいけないと、真里亜は大人しく言われるがままになる。
促されてドレッサーの前に座ると、まずはヘアメイクを整えてもらった。
メイクは派手ではないのに目がぱっちりと大きく見え、チークやリップの色も優しい印象だ。
両サイドの髪を編み込んでからアップにまとめたヘアスタイルも、どこぞのお嬢様のような雰囲気で、真里亜はまじまじと鏡の中の自分を見つめる。
「さあ、ではこちらにお着替えを」
用意されていたのは、薄いピンクでスカートがふんわり広がるロングドレス。
「いやいやいや。私、こんな色絶対似合いませんから!」
「そうおっしゃらずに、さあ。お時間も迫ってますし」
それを言われると仕方ない。
渋々着替えると、ヒールの高いシューズを履いてフィッティングルームを出る。
「まあ!なんてお美しい」
スタッフの言葉に、いや、それはお世辞でしょうと思いながら、真里亜はとにかく足元に気をつける。
「あの、もう少しヒールの低いシューズはありませんか?」
「あら、よくお似合いですのに。それに天城 文哉様の隣に並ばれるのですよね?でしたら、これくらいの高さはあった方がよろしいかと」
「ですが、履き慣れていないので転びそうで…」
「それは大丈夫ですわ。天城様がエスコートしてくださいますから」
は?!と真里亜は声を上げる。
(副社長がエスコート?!そんな恐ろしい。腕をひねり上げられるか、もしくは足を踏みつけられるか…。あ、そう言えば私、副社長の足を踏んづけたことあったっけ)
企業懇親会で名前を間違われ、思わず足を踏んだことを思い出す。
今思うと恐ろしい、と両手で頬を押さえていると、スタッフがネックレスやイヤリングも着けてくれた。
その時コンコンとノックの音がして、スタッフが開けたドアから住谷が入って来た。
「失礼します。阿部さん、いかがです…おお!」
真里亜をひと目見ると、住谷は驚いたように固まっている。
「あの、住谷さん。大丈夫でしょうか?私」
「え?ああ、もちろん。大丈夫ですとも。いやー、これは楽しみですね。さあ、参りましょう」
何が楽しみなんだ?と思いながら、真里亜は住谷に続いて部屋を出た。