恋は秘密のその先に
「副社長。阿部さんのお支度整いました」

住谷の言葉に顔を上げた文哉が、真里亜を見て目を見開く。

と次の瞬間、キョロキョロと辺りを見回し始めた。

「おい、文哉。人違いじゃないぞ。正真正銘、この人が阿部さんだ」

ん?どういうこと?と眉根を寄せる真里亜の前で、二人はなにやら小声で話し始めた。

「お前、ドキッとしたんだろ?いつもの阿部さんからは想像つかないもんな」
「べ、別にそういう訳じゃ…」
「おお?珍しいなー、お前がそんなにドギマギするなんて」
「だから、してねえっつーの!」
「おやおや、そんなにムキにならなくても。顔が赤いですよ?副社長殿」
「おまっ…、もう黙ってろ!」
「はいはい」

二人が顔を寄せ合ってヒソヒソとやり取りしているのを、真里亜は真っ赤になって見守る。

(やだ!副社長も住谷さんも、あんなに顔をくっつけてイチャイチャして。見てるこっちが照れちゃう)

でも、と真里亜は真顔に戻って考える。

(応援したいな、お二人のこと。よし!私がカモフラージュとしてがんばろう!社長と住谷さんが恋人同士だってことは、他の人には気づかれないように)

真里亜は小さく自分に頷いた。
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