恋は秘密のその先に
「こちらが現在構築中の新しいセキュリティシステムです」

10時になり、文哉は会議室でシステム開発部とのミーティングに臨んでいた。

「我々のチームは、ビジネス向けにビルやオフィスのセキュリティシステムを手がけています。要は、不審人物の侵入を防ぐ目的ですね。もう一つのチームは、主にハッキングなどに対するコンピュータセキュリティのシステムを開発しています。まず、前者からご説明しますと…」

スクリーンに映し出される資料を見ながら説明を聞いていた文哉は、ふと視線を横にずらす。

壁際に控えて資料に目を落としている真里亜に、住谷が隣から何やら話しかけた。

二人で顔を寄せ合い、小声でやり取りしながら、時折ふっと微笑み合っている。

(またあいつ、彼女にちょっかい出しやがって)

するとふと住谷が顔を上げ、文哉と目が合うと、何か?というように首を傾げた。

文哉はムッとしてジロリと住谷を睨みつけてから、また資料に目を落とす。

「私からのご説明は以上です。副社長、何かご不明な点は?」
「ん?ああ、いや。大丈夫だ」
「かしこまりました。では次に、コンピュータの不正アクセスに対するセキュリティシステムとして…」

会議は続くが、文哉はどうにも住谷達の様子が気になり、話に身が入らない。

(いかんな。あとでまた資料を詳しく見直そう)

そう思い、会議は手短に切り上げた。
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