恋は秘密のその先に
第八章 コンペティション
それからしばらくして、AMAGIは大きなコンペティションに参加することになった。

有名な外資系企業のキュリアス ジャパンが、都内に自社ビルを構えるに当たり、そのビルのセキュリティシステムを任せる会社を選ぶというものだ。

セキュリティだけでなく、PCやタブレットなどのデバイスに、各種設定やソフトウェアのインストールを行うキッティング、クローニングも任せてもらえるとあって、AMAGIは総力を挙げて取り組むことになった。

「AMAGIは国内でこそ業界トップと言われているが、海外での認知度はまだまだ低い。なんとしてもこのコンペを勝ち取り、世界への大きな一歩を踏み出したい。皆で力を合わせ、全力で挑もう!」
「はい!」

副社長の文哉の言葉に、会議室に集まったシステムエンジニアやプログラマー達が声を揃えて頷く。

そこからは怒涛の日々だった。

朝から晩まで、ひっきりなしに副社長室の電話が鳴り、会議も長時間行われる。

今が一体何時なのか、今日は一体何曜日なのかも分からなくなるほど、真里亜も文哉のサポートに追われていた。

「この資料、項目別にまとめておいてくれ。それから、すぐにミーティングを始める。集められるメンバーは全員会議室に呼んでくれ」
「かしこまりました」

手が10本は欲しいと思いながら、真里亜は受話器を肩と頬で挟みながら内線をかけ、同時にパソコンで会議室の手配をする。

住谷も、いつもの軽い口調は封印して、テキパキと真里亜を手伝ってくれていた。

コンペまではあと1ヶ月。
皆、ふらふらになりながらも休日返上でがんばっている。

真里亜も、出来ることは何でもやる!と、必死で毎日を過ごしていた。
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