恋は秘密のその先に
真里亜はプレゼンで使う資料に、このセキュリティフェーズの仕組みを分かりやすく載せようと試行錯誤していた。

(うーんと、レッドゾーンの権限があるIDカードを説明するとして…。例えば私が出勤しようとすると、まずは社員用のエントランスに入ってセキュリティゲートをカードを使って通過するでしょ?上層階用のエレベーターを呼ぶ時もカードをタッチ。更には行き先階ボタンもカードをタッチしながら。エレベーターを降りて廊下を進んだら、外扉のドアをカードで開ける。最後に副社長室の前で、顔認証と指紋認証をしてロックを解除。ようやくドアが開くってプロセスよね)

つまりカードタッチだけでも4回必要だ。

プルーゾーンの権限しか与えられていないカードでは、上層階用のエレベーターを呼ぶことすら出来ない。

(んー、これをパッと見た目で分かりやすくするには…)

真里亜はイラストやカラーをふんだんに使って、何度も練り直しながら資料を作っていた。

(あとは、万が一社員がIDカードを盗まれたり紛失した場合は…)

これもプレゼンでは重要なポイントになる。

(まず、気づいた時点ですぐに24時間体制の警備室に連絡。と同時に、自分のスマホを使って社員アプリのマイページにアクセス。自分のIDカードを無効化する)

頭の中で整理しながら、真里亜はカタカタとパソコンに入力していく。

(そして無効化されたカードでゲートを通過しようとすると、アラームが鳴り警備員が駆けつける)

実際にそれで、IDカードを盗んだライバル会社の社員が捕まった事もあった。

思いのほか時間がかかったが、なんとか資料は形になり、真里亜は一度文哉に見せてみた。

「このようなイメージでいかがでしょうか?」

文哉はじっとプリントアウトした書類に目を落していたが、やがて大きく頷いて顔を上げた。

「完璧だ。これで頼む」
「はい!ありがとうございます」

真里亜はパッと顔を明るくさせて、嬉しそうに頭を下げた。
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