恋は秘密のその先に
「あれ?エラー表示だ」
部屋の奥でモニターを見ていた警備員が、小さく呟いて首をひねる。
「どうした?」
近づいた隊長に、モニター画面を指差しながら説明を始めた。
「7号エレベーターに乗っている人のデータが表示されないんです。情報の紐付けが上手くいってないのかなあ」
7号エレベーターは、高層階直通のエレベーターだった。
思わず文哉と住谷は顔を見合わせる。
「どこだ?」
急いで駆け寄り声をかけると、警備員は席を譲って画面を差し示した。
「ここです。今、この7号エレベーターに乗っているのは、この男性一人だけです」
エレベーター内を映した防犯カメラの映像に、ビジネスマンらしき男性が一人映っていた。
横に表示されたデータは、unknownとなっていて、名前や顔写真、IDナンバーなど、本来表示されるはずの情報が何もない。
「この男に見覚えは?」
「いえ、ありません」
「カメラの映像、大きく出来るか?階数ボタンを見たい」
「はい」
文哉の言葉に、警備員がカチカチとマウスをクリックして画面をズームにする。
点灯している階数ボタンは、最上階だった。
文哉と住谷の間に、一気に緊張感が走る。
「不審者だ。智史、最上階フロアの外扉をロックしろ。警備員はすぐに最上階へ。それから全館に警報ベルを」
「はい!」
文哉の言葉に、その場の皆が一斉に動き出す。
もう一度モニター画面を見ると、エレベーターが最上階に到着し、男がフロアに足を踏み入れるところだった。
突然鳴り響く警報ベルに一瞬動きを止めたあと、男は一気に走り出す。
「智史、ロック急げ!」
「あと少しだ」
男が外扉にカードをかざすのと、パソコンを操作していた住谷が、よし!とエンターボタンを押すのとが同時だった。
一瞬の差で男が扉を開ける。
「だめだ!」
クッと顔を歪めた文哉は、次の瞬間、大きく目を見開いた。
「このドア、どこの部屋だ?」
小さな画面が並ぶ防犯カメラの映像は、どこを映しているものなのかよく分からない。
最上階にあるのは社長室と副社長室だけで、どちらも同じようなドアと外扉になっており、カメラの映像だけでは判別出来なかった。
文哉は、妙な胸騒ぎがした。
(男の目的は、社長室じゃないのか?もしや…)
隣に立っていた警備員が、画面を見て叫ぶ。
「副社長室です!」
「なにっ?!」
文哉は、周りのモニターに目を走らせ、副社長室の中を映したカメラを探す。
(あった!)
部屋の中では、真里亜が一人でデスクに向かっていた。
警報ベルに驚いているのか、キョロキョロと辺りを見回している。
(顔認証と指紋認証までは突破出来るまい)
男が部屋の中に入るのは不可能だろうと思っていると、ふいに真里亜が立ち上がり、ドアへ向かうのが見えた。
(なぜだ?!)
すぐさまドアの外の様子をモニターで見ると、男が激しくドアを叩きながら何かを叫んでいるらしい姿が映る。
おそらく警報ベルに便乗して、早く外へ!などと避難を促しているのだろう。
(だめだ!!)
文哉は急いで館内放送のマイクに駆け寄り、スイッチを押して叫んだ。
「真里亜、開けるな!」
画面の中の真里亜がドアレバーに手をかけたまま立ちすくみ、上を見上げた時だった。
男が勢い良くドアに体当りし、勢いで飛ばされた真里亜が、床に激しく身体を打ちつけられるのが見えた。
「真里亜っ!」
文哉は警備室を飛び出した。
部屋の奥でモニターを見ていた警備員が、小さく呟いて首をひねる。
「どうした?」
近づいた隊長に、モニター画面を指差しながら説明を始めた。
「7号エレベーターに乗っている人のデータが表示されないんです。情報の紐付けが上手くいってないのかなあ」
7号エレベーターは、高層階直通のエレベーターだった。
思わず文哉と住谷は顔を見合わせる。
「どこだ?」
急いで駆け寄り声をかけると、警備員は席を譲って画面を差し示した。
「ここです。今、この7号エレベーターに乗っているのは、この男性一人だけです」
エレベーター内を映した防犯カメラの映像に、ビジネスマンらしき男性が一人映っていた。
横に表示されたデータは、unknownとなっていて、名前や顔写真、IDナンバーなど、本来表示されるはずの情報が何もない。
「この男に見覚えは?」
「いえ、ありません」
「カメラの映像、大きく出来るか?階数ボタンを見たい」
「はい」
文哉の言葉に、警備員がカチカチとマウスをクリックして画面をズームにする。
点灯している階数ボタンは、最上階だった。
文哉と住谷の間に、一気に緊張感が走る。
「不審者だ。智史、最上階フロアの外扉をロックしろ。警備員はすぐに最上階へ。それから全館に警報ベルを」
「はい!」
文哉の言葉に、その場の皆が一斉に動き出す。
もう一度モニター画面を見ると、エレベーターが最上階に到着し、男がフロアに足を踏み入れるところだった。
突然鳴り響く警報ベルに一瞬動きを止めたあと、男は一気に走り出す。
「智史、ロック急げ!」
「あと少しだ」
男が外扉にカードをかざすのと、パソコンを操作していた住谷が、よし!とエンターボタンを押すのとが同時だった。
一瞬の差で男が扉を開ける。
「だめだ!」
クッと顔を歪めた文哉は、次の瞬間、大きく目を見開いた。
「このドア、どこの部屋だ?」
小さな画面が並ぶ防犯カメラの映像は、どこを映しているものなのかよく分からない。
最上階にあるのは社長室と副社長室だけで、どちらも同じようなドアと外扉になっており、カメラの映像だけでは判別出来なかった。
文哉は、妙な胸騒ぎがした。
(男の目的は、社長室じゃないのか?もしや…)
隣に立っていた警備員が、画面を見て叫ぶ。
「副社長室です!」
「なにっ?!」
文哉は、周りのモニターに目を走らせ、副社長室の中を映したカメラを探す。
(あった!)
部屋の中では、真里亜が一人でデスクに向かっていた。
警報ベルに驚いているのか、キョロキョロと辺りを見回している。
(顔認証と指紋認証までは突破出来るまい)
男が部屋の中に入るのは不可能だろうと思っていると、ふいに真里亜が立ち上がり、ドアへ向かうのが見えた。
(なぜだ?!)
すぐさまドアの外の様子をモニターで見ると、男が激しくドアを叩きながら何かを叫んでいるらしい姿が映る。
おそらく警報ベルに便乗して、早く外へ!などと避難を促しているのだろう。
(だめだ!!)
文哉は急いで館内放送のマイクに駆け寄り、スイッチを押して叫んだ。
「真里亜、開けるな!」
画面の中の真里亜がドアレバーに手をかけたまま立ちすくみ、上を見上げた時だった。
男が勢い良くドアに体当りし、勢いで飛ばされた真里亜が、床に激しく身体を打ちつけられるのが見えた。
「真里亜っ!」
文哉は警備室を飛び出した。