恋は秘密のその先に
「あーあ、こんなんじゃ誰も私の後任になってくれないよね。もうさ、いっそのことAI秘書の方がいいんじゃない?うん、それがいいよ。今度、住谷さんに相談してみようっと」
住谷は、秘書課に5人いる男性秘書の一人で、真里亜がこなせない副社長の秘書業務を担当してくれている。
副社長との会話が成り立たない真里亜にとっては、住谷は唯一の相談相手だ。
毎朝、副社長室にやって来る住谷は、真里亜にその日の副社長の予定を報告してくれる。
本来なら副社長に伝えるために来てくれるのだが、本人が聞き流すので、住谷は真里亜に向かって話をしてくれるようになっていた。
給湯室でドリップコーヒーを濃いめに淹れると、真里亜は副社長のデスクに運ぶ。
「お待たせいたしました。コーヒーをどうぞ」
無反応には慣れている。
そのまま頭を下げ、真里亜は入り口近くの自分の席に座った。
パソコンを立ち上げながら横目で様子をうかがうと、副社長はひと口コーヒーを飲んだあと、そのまますぐふた口目を口にする。
(うん、どうやら美味しく淹れられたみたいね)
真里亜は思わず、ふっと笑みをもらした。
まだ副社長について日が浅かった時、コーヒーをいつもより濃いめに淹れてしまったことがあった。
「不味い、淹れ直せ」と言われるかも…と思いながら出してみると、いつもはひと口ずつ飲み、最後まで飲み切らない副社長が、その日は速いペースで飲み干したのだった。
それからは、同じように濃いめに淹れるようにしている。
こういうことも、いずれ自分の後任には引き継ぎしておこうと思いながらパソコンでメールをチェックしていると、コンコンとドアをノックする音がした。
「はい、どうぞ」
真里亜が答えると、失礼いたしますと住谷が入って来た。
住谷は、秘書課に5人いる男性秘書の一人で、真里亜がこなせない副社長の秘書業務を担当してくれている。
副社長との会話が成り立たない真里亜にとっては、住谷は唯一の相談相手だ。
毎朝、副社長室にやって来る住谷は、真里亜にその日の副社長の予定を報告してくれる。
本来なら副社長に伝えるために来てくれるのだが、本人が聞き流すので、住谷は真里亜に向かって話をしてくれるようになっていた。
給湯室でドリップコーヒーを濃いめに淹れると、真里亜は副社長のデスクに運ぶ。
「お待たせいたしました。コーヒーをどうぞ」
無反応には慣れている。
そのまま頭を下げ、真里亜は入り口近くの自分の席に座った。
パソコンを立ち上げながら横目で様子をうかがうと、副社長はひと口コーヒーを飲んだあと、そのまますぐふた口目を口にする。
(うん、どうやら美味しく淹れられたみたいね)
真里亜は思わず、ふっと笑みをもらした。
まだ副社長について日が浅かった時、コーヒーをいつもより濃いめに淹れてしまったことがあった。
「不味い、淹れ直せ」と言われるかも…と思いながら出してみると、いつもはひと口ずつ飲み、最後まで飲み切らない副社長が、その日は速いペースで飲み干したのだった。
それからは、同じように濃いめに淹れるようにしている。
こういうことも、いずれ自分の後任には引き継ぎしておこうと思いながらパソコンでメールをチェックしていると、コンコンとドアをノックする音がした。
「はい、どうぞ」
真里亜が答えると、失礼いたしますと住谷が入って来た。