恋は秘密のその先に
第十二章 揺れ動く想い
「はい、今後はこの番号におかけいただければと思います。よろしくお願いいたします」

次の日から、真里亜は人事部のデスクでキュリアスとの仕事を再開した。

住谷から、文哉がそれを許可して人事部の部長にも伝えた、と言われ、真里亜は抜いてあったファイルを全て共有フォルダに戻した。

キュリアスの担当者には、
今まで外線で副社長室に電話をもらっていたが、今後はスマートフォンにかけて欲しい
と頼む。

文哉とのやり取りも主にチャットで済ませ、直接顔を合わせることはなかった。

キュリアス ジャパンの新社屋の竣工も近づき、AMAGIの業務もいよいよ大詰め。

真里亜達は時間に追われ、気の抜けない日々が続いていた。

「お疲れ、阿部 真里亜。はい、これ」

人事部のデスクで残業している真里亜に、藤田が栄養ドリンクを手渡す。

「ありがとう!」
「あんまり根詰めるなよ。手伝ってやりたくても何も出来なくて悪いな」
「ううん、気持ちだけで嬉しい。ありがとね」

微笑む真里亜に、じゃあな、と手を挙げて藤田は部屋を出て行った。

ふうとひと息つき、もらった栄養ドリンクを飲みながら今後の予定を確認し【最終説明会】と書かれた項目に目をやる。

その日に、キュリアス ジャパンの新社屋で、先方の社長以下役員達に実際にセキュリティシステムを説明し、動作確認をしてもらうことになっていた。

そこでOKをもらえれば、無事にAMAGIの任務は完了する。
だが、少しでも何か疑問や不具合を指摘されれば…

(いやいや、そんな恐ろしいことには絶対にさせない!)

真里亜は拳を握りしめると、ありとあらゆる想定をして、先方の質問に答えられるように資料を作り込んでいった。
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