恋は秘密のその先に
パーティーもお開きとなり、二人はもう一度社長に挨拶してから会場を出る。

大勢の来客が一斉に動き始めた為、通路は混雑していてなかなか前に進まない。

真里亜はゆっくりと、パーティー会場に届けられた大きな花を見ながら歩く。

所狭しと並べられた豪華な花の中に、AMAGI コーポレーションから贈ったものもあった。

(うん。ゴージャスで素敵)

微笑んで頷くと、文哉にエスコートされながら、またしばらく進む。

すると、ある花の前で真里亜はふと足を止めた。

「どうした?」
「あ、いえ。このお花、とてもセンスがいいなと思って」

主張するような派手な花が多い中、その花はとても繊細で、色の組み合わせや配置もバランス良く、優しい印象だ。
それでいて、他の花に負けない華やかさもある。

「こういうお花、女性のお客様には喜ばれるかもしれません」
「そうなのか?俺は花には詳しくないから、よく分からんが」
「私も詳しくないですが、なんとなく…。すみません、偉そうなことを言ってしまって」
「いや、そんなことはない。今度うちでも利用してみよう。このフラワーショップの名前、どこかに書いてあるか?」

えーっと…と、真里亜は顔を寄せて宛名と差出人が書かれたカードを見る。

「あ!ここに書いてあるのがそうかな?」
「ああ、そうだろうな。『Fleur du bonheur』幸せの花、か」
「何語なんですか?」
「フランス語」
「ひゃー!副社長、フランス語が分かるんですね」
「分からん。簡単な単語だから、たまたま知っていた」
「いやー、さすがです!ムッシュ」
「ムッシュって、お前…」

文哉は思わず吹き出してから、真里亜にふっと笑いかけた。

「メルシー。マドモアゼル、マリア」

切れ長の目で色気たっぷりにささやかれ、真里亜は顔を真っ赤にする。

(いやいやいや。それはないですよ、副社長。鬼軍曹からジェントルマンへの振り幅が半端ないです)

もはや顔を上げられなくなり、真里亜はうつむいたまま文哉の腕に掴まっていた。
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