恋は秘密のその先に
ようやくクロークのある広いスペースまで辿り着き、文哉が住谷に連絡しようとスマートフォンを取り出した時だった。

「天城様。こちらを住谷様からお預かりしております」

スタッフが文哉に、小さな封筒を差し出した。

「俺に?ありがとう」

礼を言って受け取ると、中を開けてみる。

文字を目で追った次の瞬間、は?!と文哉は素っ頓狂な声を上げた。

「どうかしましたか?」

真里亜が尋ねると、文哉はポカンとしたまま小さなメモを見せてくる。

『のっぴきならない事情で、お迎えに上がるのが遅くなります。お部屋を押さえましたので、しばらくそちらでお待ちください。お二人の鞄も運んであります。住谷』

は?!と、真里亜も同じように声を上げる。

「お部屋?って、どこのことですか?」
「ここだろう。このホテルの3505室」

文哉は封筒から、ルームカードを取り出して見せた。

「いや、えっと。わざわざお部屋を取るなんて、どういうこと?お迎えが遅くなるなら、ロビーのソファにでも座って…」
「でも、俺達の鞄は部屋にあるらしいぞ」
「そ、そんな…」
「とにかく行ってみるしかない」

仕方なく、二人は35階に向かった。
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