不器用な神野くんの一途な溺愛
「ねー教えてよー。みんなの前では喋れないけど、神野兄弟の前だと饒舌に喋るのー? そういうテクー?」


笑ってる……けど、これは歓迎されていない。

この笑顔は、


「 (敵意だ……っ) 」


亀井さんといえば、部活で足を怪我したと嘘ついて、私に交通委員を委ねた人物。

廊下で友達と話していた時は、私に申し訳ない気持ちもあったみたいだけど……


「ねー小野宮さーん? 早く答えてくんなーい?」

「っ!」


今の彼女を見る限り、私に申し訳なく思う感情は、どこにも存在しない。

私を疎ましく思う嫌悪と、恨めしく思う憎悪で作られた「笑顔」。それだけだ。


「 (人はこんな時でさえ、笑顔を作ることが出来るんだ……) 」


足はガクガク震えて一歩も動けないくせに、頭だけは冴えてそんなことを思っていた。

そして同時に、悲しくもなっていた。


「 (笑顔で話しかけられて、嬉しかったのに……) 」


亀井さんが私に話しかけてくれる時。

それは、私に何か頼み事がある時。
私が使えそうな時。
話しかけてメリットがある時。

ただそれだけ。
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