不器用な神野くんの一途な溺愛
「あ、の……っ!」
「ん? なーに?」
「あ…………ぅ……」
でも、言えない……。
私の口も体も、まだまだ全然、訓練が足りないよ……っ。
「く……し、ぃ……」
「え?なんか言ったー?」
「〜っ!」
悔しいよ、神野くんっ……!
喋れない自分がこんなに嫌いになったのは、初めてだった。
でも、その時――
コツッ
「分かるよ莉子ちゃん、“ 悔しい”よね」
「っ!?」
私達の前に、いきなり姿を現したのは……
「久しぶり莉子ちゃん。やっと会えた」
「き……は……っ」
さっき資料室で見た、神野くんと瓜二つの笑顔をする、
希春先輩だった――