不器用な神野くんの一途な溺愛
「え!? 委員長!?」
「うん、亀井さんはさっきぶり」
驚いて顔を青くする亀井さんとは対照的に、希春先輩は余裕のある表情をして、亀井さんに手をヒラヒラさせていた。
亀井さんは急いで私に回していた腕を離すと、今までの怖い顔とは正反対の……いつもの可愛らしい笑顔に戻る。
「2回も委員長に会えるなんて、今日はいい日ですね♪ では私はこれで。じゃあね小野宮さ〜ん」
脱兎のごとく駆けて行った亀井さん。つまり……逃げた?
でも、逃げてくれて助かった……。
「 (よか、った……) 」
私の足は力が抜けてしまい、ペタンと地面に座りそうになる。
だけど、それを希春先輩の手が阻止した。
ガシッ
「おっと、大丈夫? 莉子ちゃん」
「き……はる……せ……」
先輩の長くてしっかりした腕が、私を掴んで持ち上げる。
大丈夫です、と自力で立つと、希春先輩は「座れる所を探そう」と、私の先を歩いてくれた。
「で、なに? 今の」
「え……」
移動中、私の方を向かないまま、希春先輩が尋ねる。