不器用な神野くんの一途な溺愛

「あれ? 莉子ちゃん。ほっぺどうしたの?」

「あ.......」


そう言えば、痛い.......。

さっき亀井さんが腕を回した時に、彼女についてたブレスレットが当たっちゃったんだ。


「ひっ、かい.......ちゃっ、て.......」

「そっか、痛そう」


やっと座れる所が見つかり、私が先に座った時――先輩が私の頬に手をやる。

ツツツと触られると、ピリッとひりついた。


「あっ、い……た」

「わ! ご、ごめんね!」


顔を赤くして離れる希春先輩。手だけ離せばいいのに、なんで体ごと遠くに行っちゃったんだろう……?


「コホン……赤い線が入ってるよ? 少し血も滲んでる」


わざとらしい咳払いをしながら戻ってきた先輩は、何やらカバンの中をゴソゴソし始めた。


「あったかな〜」という先輩のカバンから、「受験生のための数学」という「受験生シリーズ」の本が数冊入っているのが見えた。
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