不器用な神野くんの一途な溺愛
「お詫び、なんてカッコつけちゃったけど……。ウソ。ほんとはね、」
「……」
希春先輩は、少しだけ顔を逸らした後。少しだけ照れ臭そうな顔で「あのね」と、再び私と目を合わせた。
「明日も、一緒に帰らない?」
「……へ?」
「そう言いたくて、カッコつけて”お詫び”なんて言っただけなんだ。本当は……莉子ちゃんと一緒にいたいだけだよ」
「っ!」
先輩からの、お誘い? そんな幸せな事が、あってもいいの?
嬉しくて、信じられなくて……顔を赤くして口をパクパクさせてしまった。
分かってる。頭の中では、きちんと分かってる。
きっと今日の亀井さんの様子を見て、明日も私が嫌がらせを受けないよう。そういうボディーガードの役目を果たすべく、希春先輩が「一緒に帰ろう」と言ってくれたんだって。
きちんと、分かってる。
だけど――やっぱり嬉しい。