不器用な神野くんの一途な溺愛

「お詫び、なんてカッコつけちゃったけど……。ウソ。ほんとはね、」

「……」


希春先輩は、少しだけ顔を逸らした後。少しだけ照れ臭そうな顔で「あのね」と、再び私と目を合わせた。


「明日も、一緒に帰らない?」

「……へ?」

「そう言いたくて、カッコつけて”お詫び”なんて言っただけなんだ。本当は……莉子ちゃんと一緒にいたいだけだよ」

「っ!」


先輩からの、お誘い? そんな幸せな事が、あってもいいの?

嬉しくて、信じられなくて……顔を赤くして口をパクパクさせてしまった。


分かってる。頭の中では、きちんと分かってる。


きっと今日の亀井さんの様子を見て、明日も私が嫌がらせを受けないよう。そういうボディーガードの役目を果たすべく、希春先輩が「一緒に帰ろう」と言ってくれたんだって。

きちんと、分かってる。

だけど――やっぱり嬉しい。
< 113 / 425 >

この作品をシェア

pagetop