不器用な神野くんの一途な溺愛

幸せをかみしめながら、「悪いですよ」と何とか伝え、首を横に振った。

だけど――

私の考えている事はお見通しなのか、希春先輩は「いいんだよ」とカバンを持って立ち上がる。

そして、まだ座っている私に手を伸ばした。


「俺の思ったことが俺の希望だから、莉子ちゃんさえ良ければ、叶えてやってよ」

「っ!」


そう言われると、断るわけにもいかず……


「お、ねが……ま、す……っ」


頷いた後、希春先輩の手をとって立ち上がる。

今、手を引いてくれたのだって。初めて会った時、スルーせずに声を掛けてくれたのだって。

全部ぜんぶ、希春先輩が……どうしようもなく嬉しかった。


「き、はる……ぱい。あ……がとう、……ます」

「ふふ、お礼を言うのはこっちだよ。明日もよろしくね!」

「は、い……っ」


希春先輩の隣は、やっぱり居心地が良くて。

その後、和気あいあいと話をしていたら――自分でも驚くくらい、すぐに家に着いたのだった。
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