不器用な神野くんの一途な溺愛
ビリッ
「あっ、痛っ……!」
突然、頬に電気が走る。
と言っても、もちろん雷に打たれた訳じゃないし、ケガをした訳でもない。でも、確かに痛い。
この痛みは、なに――?
「か、んの……く……?」
頬を押さえたまま、神野くんを見る。
神野くんは既に私から一歩引いていて、彼の全体がよく見えた。
そう、だから見つけてしまった。
神野くんが唇に挟んだ、ネコの絆創膏を――
「あ」と私が言うよりも早く、神野くんは自分の手に絆創膏を移す。そしてグシャリと握り閉めて、そのまま、持ってきていたカバンに手をかけた。
真っ直ぐ扉に向かっている所を見ると、どうやらこのまま帰るらしい。
椅子に座ったまま放心状態になっている私は、彼を引き止めることも追い払うことも出来なかった。ただ頬に手を当てて、神野くんの後ろ姿を見る。
どうして――?
私が言うかわりに、神野くんがその言葉を吐いた。