不器用な神野くんの一途な溺愛

バタンッ


「……へ?」


一瞬のことだった。

もう帰るとばかり思っていた人から、あんな言葉を聞かされて……

あんな……まるで王子様がお姫様に言うかのような言葉を……神野くんが、私に?

だとしたら.......いや、でも、本当に?


さっきから、同じことを繰り返し思っている。

あぁ、もう……っ。


「 (神野くんこそタチ悪い……。

あんな冗談言われちゃったら、ウソでも考えてしまうよ……) 」


頭が熱くなって、机におでこをくっつける。私の体温が、机に浸透していくのが分かった。


「 (希春先輩……もうちょっとだけ待っててください、お願いします……) 」


神野くんが、あんな歯が浮くようなセリフを言うなんて、明日は嵐に違いない――


そんなことを思いながら、その後、やっとのことで合流した希春先輩。


「莉子ちゃん顔真っ赤だよ、どうしたの?」


絶対言われるだろうなと思っていたセリフをまんまと言われ、思わず天を仰ぎみる。

すると空一面に、どんより雲。

神野くんという嵐がスピードを上げて私に近づいているようで……私は更に、赤面したのだった。
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