不器用な神野くんの一途な溺愛

「っ!」

「じゃーね」


俺の態度を見るに、まだ小野宮が資料室に居るだろう事を確信したらしい兄貴は、手を振ってこの場を後にする。

迎えに行くのかよ。王子様みたいに?


「俺が絆創膏剥がした時よりも真っ赤になるんだろーな、アイツ……」

「ん? 神野なんか言ったか?」

「いや……」

「そっか」

「……」


考え込む俺を見て、中島はもう介入しない方がいいと悟ったらしい。

周りの女子たちに「はい解散〜」と手を叩いて追い払った。


中島も部活に行くのか家に帰るのか、床に置いていたカバンを「ヨイショ」と持ち上げる。

そして、未だ壁にもたれかかって動く気配のない俺に「なぁ」と声をかけた。


「何か悩みがあったら言えよ? いいアドバイスは出来ないけど、聞くだけなら幾らでもできるから」

「……おぅ」

「じゃな!」


颯爽と走っていくアイツを見て思う。

俺と小野宮も、このくらいの距離感のはずだったんだ――って。

なのに、なんでだ……。
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