不器用な神野くんの一途な溺愛
バシャンッ
大きな水しぶきを残して。
「あっぶねー。なにが“ プッ”だよ。こんなに水かけて、あれで謝ったつもりかよ」
スピード落とせよな
と文句を言う神野くん。幸いにも、間一髪で傘の向きを変えたので、傘がバリアになって神野くんはほとんど濡れていない。
私はもちろん、ブロック塀と神野くんに挟まれていたので濡れることはなかった。
そして改めて感じる、神野くんの存在。
「 (だ、抱きしめられてる.......!) 」
急いでいたから、っていう事もあるけど、神野くんは傘を持たない手で、私をギュッと抱きしめていた。
「 (全然痛くない、優しく触れてくれてる……) 」
あんなに咄嗟のことだったのに、自分が濡れるのを避けるんじゃなくて、まず私を心配してくれ庇ってくれた。
「 (神野くん、本当に王子様みたいな人だなぁ.......) 」