不器用な神野くんの一途な溺愛

「か、んの、くん……っ」


私のことをあんなに想ってくれて、私のことをたくさん考えてくれて……

私、絶対に喋れるようになりたい。

神野くんの期待に、応えたいよ……っ。


「莉子? そこにいるのかね?」


おばあちゃんの声が聞こえる。私は意を決して、階段を下りた。

おばあちゃん、これからは沢山話そうね。

今まで蓋をしていた思いも全部全部、言葉に乗せて伝えてたい。


「おば、あ、ちゃ……」

「莉子……少しは調子は良くなったか?」

「……うんっ」


おばあちゃんの元に駆け寄ると、おばあちゃんは私の頭を撫でてくれた。そして、


「莉子もやるねぇ。あんな男前を惚れさせるなんて」

「お、おば、あちゃ……っ!」

「ちょっと気に食わないヤツだが、あーゆー男は優しくしてくれるってもんさ。昔はじーちゃんも、」

「わかっ、わかっ、た……から!」


話し方はまだまだ流暢じゃないけど、おばあちゃんとの間に出来ていた溝が、少し埋まった気がする。


神野くん、ありがとう。

今度神野くんに会ったら、たくさんたくさん、お礼を言いたい。

神野くん、

あなたに早く会いたいよ――

< 185 / 425 >

この作品をシェア

pagetop