不器用な神野くんの一途な溺愛
「三年の教室に臆することなく入ってくる一年なんて、斗真しかいないでしょ。

それに“ 王子”って周りが囁いてる声に、俺が気づかないとでも〜?」

「周りが勝手に、そう呼んでるだけだ」

「でも……誰か一人の“ 王子”であることには変わりないでしょ?」

「は?」



何言ってんだ?

全然理解できねー内容に、思わず小首を傾げる。

なぁ小野宮。本当に兄貴が「元気がない」ように見えたか?よく回る口だぞ。

今だって、視力が悪ぃから板書の時だけ掛けるらしいメガネの奥が、怪しく光ってる。

何か企んでるのか?

いや、企んで「いた」のか。



「聞きてー事があんだよ。俺はここでもいーけど、兄貴が困んじゃねーの?」



「別に俺は困る事ないけどなぁ」とニコニコしながら席を立つ兄貴。どうやら場所を変えるらしい。

そして二人で教室を出ようとした時、副委員長とすれ違った。
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