不器用な神野くんの一途な溺愛
「はぁ……」



もう何度目かになるか分からないため息を着いた、その時。



「元気ないね」



うちわを貸してくれた早乙女くんが、帰り支度をしながら私を見ていた。



「元気……ないことは、ない……んだけど……」

「ぷ、どっち」



静かに笑う早乙女くん。滅多に見られない早乙女くんの笑顔に、思わず私もつられてしまう。

すると早乙女くんが「聞くよ」と、帰るはずだったのに、また着席した。



「何かあったか、俺で良ければ聞くよ」

「え、でも……」

「隣でずっとため息つかれても気になるしね」



そしてまた、早乙女くんは笑った。

私は恥ずかしさから、早乙女くんから未だ借りていたうちわで、顔を隠す。
< 255 / 425 >

この作品をシェア

pagetop