不器用な神野くんの一途な溺愛
すると早乙女くんは、私の方は向かずに前を向いたまま「んー」と頬杖をついて悩んでいた。


かと思えば、


「それさ、簡単」


と呆気なく答えを出す。



「それは小野宮さんが嫉妬してるんだと思う」

「し、っと……?」

「うん。とられたみたいで悔しいんじゃないの」

「とられた、みたい……?」



とられたって……神野くんを?

でも、別に神野くんは私の物でもないし……あ、いや、違う。



あの時間だけは、私だけの神野くんだ――



「そ、そうなの、かも……」

「納得いった?」

「うん……放課後だけは、私の先生なの」

「……ん?」



まだうちわで顔を隠したままの私に、早乙女くんが返事をする。

その声色に、所々「?」が見え隠れしていた。
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