不器用な神野くんの一途な溺愛
「早乙女、くんは……私を、心配、してくれて……気に、してくれて……それで、話を、聞いてくれた、のに……」

「それで?」

「お、追い出す、なんて……ひどいっ」



こんな事を言ったら、神野くんの機嫌を損ねるに決まってる。

言うべきじゃない言葉。

分かってる。

もっと言葉を選ばないといけなかったのも、分かってる。


でも――我慢できなかった。



「……」

「……っ」



沈黙が怖くて、うちわを壁にする。

神野くんと少しだけ目が合った瞬間、自分が動かしたうちわによって、視界は遮られた。


すると神野くんは「はぁ」と重たいため息をつき、「お前さ」と、いつもより少しだけ低い声で話し始める。



「なんで他人の気持ちにはそんなに早く気づいて、自分の気持ちには鈍感なわけ?」

「私の……気持ち?」
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