不器用な神野くんの一途な溺愛
「(神野くん……っ)」



出てきた記憶にもう一度蓋をして、神野くんに思いを馳せる。


知らなかった。


神野くんが私の代わりに新入生代表の挨拶をしてくれたなんて、知らなかった。



「(それなのに、私は……っ)」



怖いからと避け、
話したくないからと逃げ、
会わないように隠れ続けた。


一言も、お礼を言わずに……。



「うっ……」

「莉子ちゃん……」



泣いた私に、希春先輩は教卓にあったティッシュの箱を渡してくれた。
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