不器用な神野くんの一途な溺愛
「はい、これ。使って」

「あり、がとう……ござい、ますっ」

「ビックリするよね。何も聞かされてなかったんだもんね」

「うぅ〜……っ」



拭いても拭いても止まらない涙が、私の顔を伝う。

神野くんは今までどんな気持ちで私を見て、どんな事を感じて、


そして、



『好きだ小野宮。

俺は、お前のことが好きなんだ』



どんな気持ちで、あの言葉を言ってくれたんだろう。

どんな想いで、私に気持ちを伝えてくれていたんだろう?



「私、神野くんに、謝りたい……っ。ずっと、ずっと、神野くんに、ひどい事を、してきて……っ」

「莉子ちゃん……」



私は、逃げてばかりだ。

逃げて逃げて、沢山逃げて……

まだ顔も名前も知らない私の事を助けてくれた神野くんに、何一つ恩を返せていない。



「自分が、嫌い……っ」



成長したって思っていたけど、結局、私は守られ続けていた。

昔から、今まで、ずっと。

ずっとずっと神野くんに、守られていたんだね……。
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